行動変容 6 分で読める

損失回避を、歩き続けるための仕組みに生かす

利益よりも損失を重く受け止めやすい傾向を、ウォーキングの継続支援にどう生かせるか。運動サプリ®の応援金とコミットメントの仕組みを、行動経済学の視点から紹介します。

公園の道を歩く人物。行動変容アプリ「運動サプリ®」のイメージ

健康のために歩こうと決めても、続けるのは簡単ではありません。将来得られるかもしれない健康上の利益より、今休むことの心地よさを優先しやすい傾向があるためです。行動経済学では、こうした傾向を 現在バイアス と呼びます。

損失回避という、人の偏り

行動経済学者のダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーは、人が同じ金額の利益と損失を比べたとき、損失をより強く受け止める傾向を示しました。これは、プロスペクト理論の核となる 損失回避 と呼ばれる性質です。

健康アプリでは、歩数に応じたポイントや目標達成時の景品など、利益を提示する方法がよく使われます。ただし、将来受け取るポイントよりも今休むことを優先してしまえば、それだけで継続できるとは限りません。

設計を反転させる

運動サプリ®は、利益を加えるだけでなく、損失回避を生かした仕組みを採用しています。

ウォーキングチャレンジを作るとき、チャレンジに紐づく応援金は、あらかじめスマートコントラクトに預けられます。

目標を達成すれば、設定した配分に従って、応援金はチャレンジャーや受取人に分配されます。

一方、目標を達成できなければ、自分や応援したい人が受け取る予定だった応援金は、事前に定めた別の配分先へ移ります。

この仕組みでは、次のような損失が意識されます。

  1. 自分が応援金を受け取れない。達成時に受け取る予定だった分が、別の配分先へ移ります。
  2. 大切な人に応援金を届けられない。家族や友人を受取人にしていた場合、その人に届く予定だった分が届きません。
  3. 周囲への約束を果たせない。チャレンジを共有していれば、未達を避けたい気持ちが生まれることがあります。

特に 2 つ目は、損失回避と利他性 を組み合わせたものです。大切な人に応援金を届けたいという気持ちが、自分のためだけに設定した目標とは異なる動機になる可能性があります。

コミットメントとしての応援金

応援金を先に預けるという行為そのものが、行動経済学でいう コミットメント です。

コミットメントとは、途中でやめにくい状況をあらかじめ用意しておくことです。セイレーンの歌に惑わされないよう、オデュッセウスが自らをマストに縛らせた逸話は、その代表的な比喩として知られています。

健康行動でも、応援金を先に預けることで、目標を立てた時点の意思を後から支えることができます。意志の強さだけに任せず、続けやすい状況を用意するという考え方です。

JPYC というインフラ

この応援金の仕組みには、円ベースで扱えるブロックチェーン上の通貨 が使われています。運動サプリ®では、JPYC がその基盤となっています。

日本円に連動するステーブルコインであるため、応援金の額面を円単位で捉えられます。

また、応援金をスマートコントラクトに預け、条件に応じて配分するためには、オンチェーンで扱える通貨であることが重要です。

JPYC を使うことで、応援金を実際の経済的なコミットメントとして扱い、あらかじめ定めた条件に沿って配分できます。この点で、JPYC は決済手段にとどまらず、チャレンジの仕組みを動かすための基盤でもあります。

続けるためのアプリ

運動サプリ®は、損失、応援金、周囲の人との関係を組み合わせ、ウォーキングを続けるきっかけを用意するアプリです。こうした仕組みがすべての人に同じように作用するわけではありませんが、意志の強さだけに頼らず、自分に合った条件を考える一つの方法になります。

始める場合は、負担にならない金額と無理のない歩数から試し、続けやすさを確かめながら調整してください。

#行動変容 #損失回避 #行動経済学 #歩く理由 #コミットメント

Share