Patent & IDOM

特許と IDOM の設計思想 運動サプリ® を支える 2 本柱

運動サプリ® の独自性は、ひとつの機能ではなく 「歩く理由を設計する仕組みの組み合わせ」 にあります。その組み合わせは、2 件の日本特許 (第6696672号・第6762647号) と海外特許群によって権利化されています。本ページは、一般ユーザー向け 仕組みページ から切り出した、知財・設計思想の詳細版です。パートナー候補・投資家・知財関係者を想定読者としています。

2 件の特許の関係 ── 基本特許と拡張特許

運動サプリ® の中核は、登録順に積み上がった 2 件の特許で構成されます。

第6696672号 第6762647号
登録日 2020 年 4 月 27 日 2020 年 9 月 11 日
位置づけ 基本特許 (骨格) 拡張特許 (経済圏)
中心構造 運営者サーバ + ブロックチェーン + 参加者端末 + 証明者端末の 4 層構造 複数スマートコントラクトを連携させたトークン経済
守るもの 3 者構造・応援金預け入れ・自動配分の組み合わせ 応援トークン (サンクストークン)・長期応援トークン・予想コントラクト等

672号 が「仕組みの骨格」を独占し、647号 が「応援を経済として回す上物」を独占しています。両方を持つことで、模倣者は骨格を回避しても上物に当たり、上物を回避しても骨格に当たる 二重の壁 が成立しています。

01 / 基本特許

第6696672号「チャレンジ支援システム」

請求項 1 が独占する 5 要素のセット

第6696672号 の請求項 1 は、以下の 5 要素すべての組み合わせ を権利範囲としています。1 つでも欠けると侵害になりませんが、逆に言えばこの 5 要素を揃えた瞬間に権利範囲に入ります。

  1. 運営者サーバが契約条件 (達成条件 + 期限) をブロックチェーンに送信 すること
  2. 参加者端末がタスクのために預ける資金額・成功時 / 失敗時の配分設定 (複数の配分先と配分金額) をブロックチェーンに送信すること
  3. 参加者端末が判定用データ をブロックチェーンに送信すること
  4. スマートコントラクトが判定用データに基づいて契約条件の充足を判定 すること
  5. 成功時は成功時配分設定、失敗時は失敗時配分設定に従って 自動送金 すること

歩数計アプリ、健康ポイント制度、ピアサポート型 SNS のいずれも、この 5 要素を 同時に 備えていません。

特に強い従属請求項

請求項 1 だけでも十分広いのですが、672号 は従属請求項でさらに 回避困難な防御線 を張っています。

請求項 3:エビデンス・オフチェーン保存

コンテンツとコンテンツを識別する情報を運営者サーバに送信し、識別情報のみをブロックチェーンに送信する

写真・音声などの活動エビデンスはサーバに保存し、ハッシュ値だけをチェーンに刻む 構成。ガス代と個人情報保護を両立させる、ほぼ必須の設計を押さえています。

請求項 4:第三者証明者の組み込み

証明者端末が運営者サーバに証明者情報を送信し、判定用データをブロックチェーンに送信する

フィットネスクラブ・医師・整骨院などの 第三者が客観的に達成を証明する経路 を権利化。本人申告に依存しない仕組みを構築できるのは、運動サプリ® だけです。

請求項 5:端末分離 (第 1 端末と第 2 端末)

エントリー部・設定送信部を備える第 1 の参加者端末と、判定用データ送信部を備える第 2 の参加者端末

応援する人 (スポンサー側) と歩く人 (チャレンジャー側) で 端末を分けられる ことを明示。家族応援型・企業スポンサー型のすべての構成がこの請求項に入ります。

請求項 6:トークンコントラクト連携

参加者ごとのトークンに関するデータをブロックチェーンに送信するトークンコントラクト生成部

健康トークン・ポイントトークンとの連携をすでに 672号 が押さえています。後発が「ポイントを足せばよい」と考えても、ここで止まります。

請求項 15〜17:没収金を成功者に分配

タスクの失敗時の配分設定には、資金の全部又は一部である没収金を、タスクに失敗したユーザとは異なるユーザに対して分配する設定が含まれる (請求項 15)

タスクに失敗したユーザとは異なるユーザは、タスクにエントリーしたユーザのうちタスクに成功したユーザである (請求項 16)

没収金は、タスクに成功したユーザに均等に分配される (請求項 17)

これが 672号 の 最大の独自ポイント です。

ピアサポート型は「励まし合う」だけで終わりますが、運動サプリ® は 「失敗した人の応援金が成功した人に流れる」 という、行動経済学的に強烈な動機構造を権利化しています。賭け事ではなく、コミットメント装置 として法的に保護されたピア相互送金です。

図解:672号 の処理フロー

┌──────────────┐    契約条件      ┌──────────────────────┐
│ 運営者サーバ │ ───────────────▶ │                          │
└──────────────┘                  │                          │
                                  │   ブロックチェーン       │
┌──────────────┐  資金額・配分    │   (スマートコントラクト) │
│ 参加者端末   │ ───────────────▶ │                          │
│ (応援する人) │                  │   ・契約条件を保持       │
└──────────────┘                  │   ・判定用データを受領   │
                                  │   ・成功/失敗を判定      │
┌──────────────┐  判定用データ    │   ・配分設定に従い送金   │
│ 参加者端末   │ ───────────────▶ │                          │
│ (歩く人)     │                  │                          │
└──────────────┘                  └──────────────────────┘
                                              │
┌──────────────┐                              │  自動送金
│ 証明者端末   │ ─判定用データ──────────────▶│
│ (第三者)     │                              ▼
└──────────────┘                  ┌──────────────────────┐
                                  │ 還付先・寄付先・成功者   │
                                  │ ・運営手数料             │
                                  └──────────────────────┘

02 / 拡張特許

第6762647号「プログラム、チャレンジ支援システム、チャレンジ支援方法、端末」

請求項 1:2 つのスマートコントラクトを連携させたトークン経済

647号 は、672号 の骨格の上に 応援を経済として回す上物 を載せています。請求項 1 は、ブロックチェーン上に 2 つのスマートコントラクト が連携して存在することを権利化しています。

  • 第 1 のスマートコントラクト (チャレンジコントラクト):契約条件の判定と第 1 トークン (応援金本体) の配分を担う
  • 第 2 のスマートコントラクト (サンクストークンコントラクト):第 1 ユーザ (歩く人) から第 2 ユーザ (応援者) に配分可能な 第 2 トークン の残高を管理し、その残高比率に応じて第 1 トークンを応援者に分配する

これは何を意味するか。

歩く人は、応援してくれた人それぞれに 「ありがとうトークン」 を配ります。チャレンジが成功した時、応援金は ありがとうトークンの保有比率に応じて自動で応援者全員に配られます。「誰がどれだけ応援してくれたか」を歩く人本人が評価し、結果配分に反映できる仕組みです。

特に強い従属請求項

請求項 2:歩く人自身がトークンを発行できる

第 2 のトークンを発行するために用いるトークン発行情報を生成する処理と、トークン発行情報をブロックチェーンネットワークに送信する処理

ありがとうトークンの発行権は、歩く人自身にあります。運営者の許可は不要。ユーザが応援経済圏を自分で立ち上げられる ことが権利化されています。

請求項 3:トークンの転々流通

第 2 のユーザから第 3 のユーザに対する第 2 のトークンの配分

応援者が、さらに別の応援者にありがとうトークンを再配分できる。歩く人が知らない応援者まで巻き込める 応援の連鎖 を権利化しています。

請求項 4・5:長期応援トークンと難易度係数

第 3 のトークンの残高を管理する第 3 のスマートコントラクト

第 2 のトークンの残高及びチャレンジの難易度に基づく第 3 のトークンの配分

短期 (チャレンジ毎) のありがとうトークンとは別に、長期 (生涯) の応援貢献度 を管理する第 3 のスマートコントラクトの存在を権利化。さらに「難しいチャレンジを応援した人ほど長期スコアが上がる」という難易度補正まで含めています。健保組合・保険会社が長期インセンティブを設計するための土台です。

請求項 9:予想コントラクト

トークンを判定結果の予想に対して賭けるトランザクションを生成し、第 2 のスマートコントラクトへ送信する

第三者が、誰かのチャレンジの成功 / 失敗に 「関心」をトークンで投じる 仕組みまで権利化。社会的注目を経済化する経路を押さえています。

請求項 6・8:ギブアップと配分

チャレンジの中断を示す情報を第 1 のスマートコントラクトへ送信

判定がなされた後に有効となる第 2 のトークン

「ギブアップ」「自己解体」など、チャレンジを途中で終わらせる際の資金処理パターン、および 判定確定後に有効化されるトークン という、ゲーム理論的に強い設計まで権利範囲です。

図解:647号 の経済圏

                  ┌──────────────────────┐
                  │ チアリングトークン       │
                  │ コントラクト             │ ← 運営者発行
                  │ (応援文脈の共通通貨)     │
                  └──────────────────────┘
                              │
                              ▼  応援金として供託
┌────────────────────────────────────────────┐
│  チャレンジコントラクト                       │
│  ・契約条件を判定                             │
│  ・成功/失敗/中断で第1トークンを自動配分      │
└────────────────────────────────────────────┘
                              │ 第1トークン (応援金本体)
                              ▼
┌────────────────────────────────────────────┐
│  サンクストークン コントラクト                │
│  ・歩く人が応援者に「ありがとう」を配布       │
│  ・残高比率で第1トークンを自動分配            │
│  ・応援者間で転々流通可                       │
└────────────────────────────────────────────┘
                              │
                              ▼
                  ┌──────────────────────┐
                  │ 長期応援コントラクト     │
                  │ (難易度係数つき累積)     │ ← 健保/保険会社の長期施策
                  └──────────────────────┘

03 / 権利範囲マトリクス

競合は何を回避できないか

主要な「行動変容系プロダクト」が、672号・647号 のどの請求項に当たるかを整理します (例示)。

競合カテゴリ 抵触する主な請求項 回避可能か
単純な歩数計アプリなし
健康ポイント還元アプリなし (一方向報酬)
自己賭けコミットメントアプリ (本人が罰金を払う型)672号 請求項 1困難
第三者証明つき健康アプリ672号 請求項 1 + 4きわめて困難
ピアサポート + 報酬分配アプリ672号 請求項 1 + 15〜17きわめて困難
応援トークン経済を備えたアプリ647号 請求項 1〜3きわめて困難
健保長期インセンティブ + 難易度補正647号 請求項 4〜5きわめて困難
結果予想型応援アプリ647号 請求項 9困難

ピアサポート要素・応援金預け入れ・スマートコントラクト自動配分のうち、複数を組み合わせた瞬間に権利範囲に入る ように設計された請求項群になっています。

04 / IDOM

IDOM ── Incentive Driven Outcome Management

IDOM は、運動サプリ® の設計を組み立てるときの内部フレームワークです。インセンティブの設計から成果を逆算する 考え方で、特許で保護された構成要件を、現場の施策にマッピングするための言語です。

IDOM の 3 つの問い

  1. 誰の動機を、どう作るか
    本人だけでなく、スポンサー (家族・企業・自治体・健保) と受取人 (本人・第三者・社会的届け先・成功者ピア) の動機も同時に設計対象にする。
    → 672号 請求項 1・5、647号 請求項 1 に対応。
  2. 成功・失敗の結果を、誰が受け取るか
    応援金は賭け金でも罰金でもなく「届け先を設計するお金」。誰に届くかは設計者が選べる。
    → 672号 請求項 1・15〜17、647号 請求項 1 に対応。
  3. 動機と結果を、どう接続するか
    動機 → 行動 → 結果 → 受取人 の連鎖を、スマートコントラクトで人を介さず実行する。
    → 672号 請求項 1 の自動配分部分、647号 請求項全般に対応。

IDOM で再定義できる施策の例

施策 動機を持つ人 歩く人 結果の届け先
家族応援型配偶者・親本人本人 + 失敗時は家族
健康経営企業従業員従業員 + 成功者ピア
健保長期施策健保組合加入者加入者 + 長期応援者 (647号 第 3 コントラクト)
自治体介護予防自治体高齢者高齢者 + 見守り家族 + 介護事業者
CSR / 寄付連動協賛企業一般参加者成功者 + 寄付先団体

同じ部品の組み合わせで、対象も目的も異なる施策がすべて実装できる。これが、運動サプリ® が「下のレイヤー」としてパートナーに提供できる理由です (パートナー戦略は 法人向けハブ)。

05 / 先行技術との断絶

何が「新しい」のか

行動変容領域の先行技術と、運動サプリ® の特許群が断絶している点を整理します。

先行技術カテゴリ できること できないこと 運動サプリ® で実現したこと
歩数計アプリ記録動機設計歩く前の動機を 3 者で組み立て
健康ポイント一方向の報酬損失回避の活用応援金の預け入れと条件付き配分
ピアサポート SNS励まし合い経済的接続失敗者 → 成功者の自動送金 (672号 15〜17)
コミットメントアプリ本人の自己賭け第三者の巻き込みスポンサー・証明者・受取人の分離
健康トークン施策ポイント発行応援者ごとの貢献評価サンクストークン (647号)
ブロックチェーン健康記録記録の改ざん防止経済的自動執行配分まで含めた自動実行

歩数アプリ・健康ポイント・ピアサポート型アプリのいずれかが部分的に類似していても、組み合わせ全体は運動サプリ® の独占領域 です。

06 / 取得・出願状況

主要市場での保護

日本発の行動変容プロトコルを、主要市場でも保護する方針です。

国・地域 番号 状況
日本第6696672号登録済 (基本特許)
日本第6762647号登録済 (拡張特許)
日本第7464334号登録済
韓国第 10-2313308 号登録済
韓国第 10-2482357 号登録済
台湾第 I822932 号登録済
欧州出願中
米国出願中
中国出願中

優先日が 2018 年 12 月 21 日 (672号) および 2019 年 8 月 9 日 (647号) と早く、ブロックチェーン × 行動変容領域では世界的にも先発組のポートフォリオです。

07 / 参入障壁

特許がどう参入障壁として機能するか

投資家視点で、特許がどう参入障壁として機能するかを整理します。

  • 回避設計が困難:5 要素セット (請求項 1) と没収金の成功者分配 (請求項 15〜17) は、行動変容の動機設計をする上で避けて通れない領域に張ってある
  • 重ね張り:672号 (骨格) と 647号 (経済圏) の二重構造により、どちらか一方だけ回避しても残る
  • 主要市場での保護:日本・韓国・台湾で登録済、米欧中で出願中
  • 継続出願余地:スマートコントラクトの実装パターン、トークン経済の組み合わせはまだ拡張余地がある (第 7464334 号 もその系譜)

スマートコントラクトを採用しているため、運営が後から書き換えたり没収益で儲ける構造を排除 しています。これは利用者・パートナー双方への信頼性担保であり、特許で保護された設計思想の帰結です (実装の詳細は スマートコントラクトと JPYC)。

Detailed FAQ

詳細 FAQ ── 想定される厳しい質問への回答

本セクションは、投資家・VC、パートナー候補企業 (健保組合・自治体・健康経営担当)、知財関係者、技術者 からの精査を想定して作成されています。一般ユーザー向けの簡易 FAQ は 使い方ページの FAQ を参照してください。

A / 特許の権利範囲・回避可能性

A. 特許の権利範囲・回避可能性

A1. 「特許」と言っても、ソフトウェア特許は無効になりやすいのでは?

日本特許第6696672号 (2020 年 4 月 27 日登録) および第6762647号 (2020 年 9 月 11 日登録) は、いずれも 査定登録済みの有効な特許 です。出願から登録までの間に、日本特許庁の審査官による拒絶理由通知を経て登録されています。

ソフトウェア特許全般に「無効になりやすい」という一般論は存在しません。本特許は単なるアルゴリズムや抽象的アイデアではなく、「運営者サーバ + ブロックチェーン + 参加者端末 + 証明者端末」という具体的なシステム構成と、その間で行われる具体的な処理ステップ を構成要件としており、特許法上の発明性要件を満たしています。

第6696672号 は登録後 5 年経過、第6762647号 は登録後 5 年経過しており、これまでに無効審判の請求はなされていません。

A2. 請求項 1 は広すぎる。実体審査で本当に通ったのか?

第6696672号 請求項 1 は確かに広い権利範囲ですが、これは 出願時の先行技術調査と審査を通過した結果 です。公報の引用文献欄に記載されている先行技術 (特開 2003-196408 号、Qiita 記事「お金を賭けた目標設定でハラハラドキドキ達成させるサイト」、Deloitte 社のヘルスケアブロックチェーンレポート 等) と対比して、新規性・進歩性が認められて登録されています。

権利範囲が広いことは、特許権者にとってのメリットであり、後発参入者にとっての回避困難性そのものです。

A3. 請求項 1 の構成要件を一つでも外せば回避できるのでは?

理論上はその通りです。しかし、構成要件を外すと 「運動サプリ® が成立している理由」が同時に消えます

外す構成要件 失われる機能 製品としてどうなるか
契約条件 (達成条件 + 期限) をブロックチェーン送信コミットメントただの歩数アプリ
預ける資金額・配分設定の送信損失回避健康ポイントアプリ
判定用データの送信達成判定の自動化手動申告アプリ (賭博的構造になる懸念)
スマートコントラクトによる自動判定改ざん防止・運営非依存運営委託型アプリ (信頼コスト発生)
配分設定に従った自動送金届け先設計単純な送金アプリ

特許は 「回避すると製品の存在意義が消える場所」 に張られています。これは特許設計の常套手段であり、回避困難性の本質です。

A4. サーバー実装にすれば、ブロックチェーンを使う請求項を回避できるのでは?

回避できません。第6696672号 は 請求項 12〜14 でサーバー実装パターンも権利範囲に含めています

端末装置から契約条件・資金額・配分設定を受信し、サーバー装置の記憶部に保存する手段、所定の口座への入金を確認する手段、判定用データに基づいて契約条件を判定する手段、配分設定に従って所定の口座から各配分先に資金を移動する手段を備えるサーバー装置 (請求項 14 要旨)

つまりブロックチェーンを外しても、サーバーで同等機能を実装した瞬間にこの請求項に該当します。「ブロックチェーン依存」は運動サプリ® の選択であって、特許の限界ではありません

A5. 「失敗者 → 成功者の自動分配」は本当に独占的か?

第6696672号 請求項 15〜17 で明示的に権利化されています。

  • 請求項 15:失敗時の配分設定に、失敗ユーザとは異なるユーザに対する没収金分配の設定を含める
  • 請求項 16:そのユーザを「同じタスクにエントリーした成功者」とする
  • 請求項 17:成功者に 均等分配 する

この 3 つの請求項は、行動変容のためのピア相互送金を、運営者を胴元にせずスマートコントラクトで実装する設計 を保護しています。同等の機能を実装するには、これらの請求項を回避する必要があります。

A6. 米国・欧州・中国では出願中とのことだが、これらの市場で先に他社が出願したら?

優先日 (2018 年 12 月 21 日) が確定している ため、これより後の出願は新規性・進歩性の判断において、本特許ファミリーの存在を考慮されます。後出願による先取りは原則として不可能です。

ただし、各国の審査基準により、日本と完全に同じ請求項範囲で登録されるとは限りません。米欧中での権利範囲は出願経過によって決まるため、不確実性は残ります。これは投資検討時に留意すべき点ですが、日本・韓国・台湾の登録済特許により、東アジア市場では既に保護が成立 しています。

A7. 出願経過情報 (包袋) で、補正によって権利範囲が狭められた可能性は?

出願経過情報は J-PlatPat (特許情報プラットフォーム) で公開 されており、第三者が確認可能です。請求項 1 が登録された権利範囲そのものであり、本 FAQ で引用している構成要件は登録時の請求項のままです。

詳細な包袋分析が必要な場合は、知財調査会社による調査を推奨します。

A8. 「先使用権」を主張する第三者は現れないか?

先使用権 (特許法第 79 条) は、特許出願時点で既に同一発明を実施していた者にのみ認められる権利です。本特許の優先日は 2018 年 12 月 21 日。それ以前に、本特許の構成要件すべて (3 者構造 + 応援金預け入れ + スマートコントラクト自動配分 + 失敗者 → 成功者分配 等) を組み合わせて実施していた事業者は、調査の限り存在しません。

引用文献として挙げられている Qiita 記事の個人開発サイトや Deloitte 社レポートは、本特許の構成要件をすべて満たしてはいません。先使用権の成立はきわめて困難 と考えられます。

B / 競合・代替手段との比較

B. 競合・代替手段との比較

B1. PayPay や LINE Pay で同じことができるのでは?

決済アプリと運動サプリ® はレイヤーが異なります。

決済アプリ (PayPay 等) 運動サプリ®
機能カテゴリ送金の道具行動変容の仕組み
送金タイミング人間がボタンを押した時事前ルールで自動
判定主体人間スマートコントラクト
失敗時配分概念として存在しない事前設計が必須要件
失敗者 → 成功者分配実装不可 (運営が胴元になる)スマートコントラクトで実装

決済アプリの送金機能を組み合わせても、「事前預け入れ + 自動判定 + 自動配分」の 3 点セット は成立しません。人間の意志が介在する送金は、コミットメント装置として機能しないためです。

もし PayPay 等が同等機能を独自に実装した場合、特許第6696672号 請求項 1 (または請求項 12〜14 のサーバー実装版) に該当し、特許侵害となります。

B2. PayPay がプログラムを書けば実装できる。技術的にできることを禁じるのが特許制度なら、特許権者の主張は強権的では?

技術的に実装可能であることと、法的に実施可能であることを分けるのが特許制度です。これは強権ではなく、特許法によって明文で定められた制度設計 です (特許法第 68 条 専用実施権)。

PayPay 規模の上場関連企業が、特許侵害リスクを取って独自実装する経済合理性はありません。

  • 法務部による特許調査が標準プロセス
  • 上場企業にはリスク開示義務がある
  • 差止命令が出ればサービス停止
  • 損害賠償リスク (売上規模に応じて数億円〜)

実装するならライセンス取得が合理的選択肢となり、その場合は運動サプリ® の特許権者がライセンサーになります。

B3. Strava、Apple Health、Google Fit、FitBit 等の歩数・運動アプリと何が違うのか?

これらは 歩数・運動データの記録および可視化アプリ です。運動サプリ® は 歩く理由 (動機) の設計アプリ であり、機能カテゴリが異なります。

記録アプリ (Strava 等) 運動サプリ®
中心機能運動データの記録動機の設計
お金の流れなし応援金の預け入れと配分
達成判定ユーザー自身が見るスマートコントラクトが自動
失敗時の仕組みなし配分先の事前設計
第三者の巻き込みSNS 的共有のみスポンサー・受取人として経済的に結合

運動サプリ® は、これらの記録アプリから歩数データを受け取って動作することも可能です (HealthKit / Google Fit 連携)。競合ではなく、補完関係 と整理するのが正確です。

B4. 健康ポイント還元アプリ (d ヘルスケア、健康第一、自治体ポイント 等) との違いは?

健康ポイントアプリは「達成したら一方向にもらえる」構造です。運動サプリ® は「事前に預けて、達成結果で複数の届け先に自動配分する」構造です。

行動経済学的に重要な違いは、損失回避が働くかどうか です。一方向報酬では「もらえなかった」だけで終わりますが、運動サプリ® では「自分の応援金が別の届け先に行く」という能動的な損失感覚が生まれます。これが継続率の差につながります。

なお、健康ポイント還元アプリが応援金の預け入れ + 失敗時配分を実装すると、第6696672号 請求項 1 に該当します。

B5. コミットメント・デバイス系のアプリ (stickK、Beeminder 等) はどうか?

これらは「本人が自分に賭ける」型のコミットメントアプリです。海外で先行例があります。運動サプリ® との違いは以下の通りです。

コミットメント型 (stickK 等) 運動サプリ®
動機の起点本人のみ本人 + スポンサー + 受取人 (3 者)
失敗時の届け先慈善団体や本人が嫌う団体任意の複数の届け先 (家族・寄付先・成功者ピア 等)
達成判定第三者証人 (人間)スマートコントラクト + 判定用データ
運営運営会社が資金を保管スマートコントラクトが保管
失敗者 → 成功者分配なしあり (請求項 15〜17)

stickK 等は本特許の優先日 (2018 年 12 月) 以前から存在しますが、本特許の構成要件すべて (特にスマートコントラクト自動配分と失敗者 → 成功者分配の組み合わせ) を満たしていないため、先行技術として本特許の登録を妨げませんでした。

逆に言えば、これらのアプリが運動サプリ® と同等機能を実装するには、本特許の権利範囲に入る形になります

B6. ピアサポート型健康アプリ (みんチャレ 等) との違いは?

ピアサポート型は「仲間と励まし合う」関係性で動機を生みます。経済的接続は通常ありません。

運動サプリ® は 「失敗者の応援金が成功者に届く」 という経済的接続を持ちます。励ましの強度が違うだけでなく、他人の達成が自分の経済的利益に直結する ため、ピア圧力の構造が異なります。

ピアサポート型アプリが、同等の経済的接続 (失敗者 → 成功者分配) を実装すると、第6696672号 請求項 15〜17 に該当します。

B7. 海外で類似サービスが先に出てきたら、運動サプリ® の優位性は崩れないか?

優先日 2018 年 12 月 21 日 のため、これより前に同等構成のサービスが存在した証拠が出てこない限り、本特許の有効性は維持されます。本特許の引用文献調査では、優先日前の先行技術として本特許の構成要件をすべて備えるサービスは確認されていません。

海外市場については、米欧中で出願中の特許の登録範囲によります。出願経過は J-PlatPat 等で確認可能です。

C / ビジネスモデル・収益性・スケール

C. ビジネスモデル・収益性・スケール

C1. 特許で守られているのは分かったが、市場規模はあるのか?

主要なターゲット市場は以下の通りです。

市場 規模感 (参考)
日本の健康経営市場健康経営優良法人認定企業 1 万 9 千社超 (経済産業省、2024 年時点)
日本の健康保険組合約 1,400 組合、加入者 2,800 万人超
自治体介護予防事業全国 1,741 市区町村、要支援者 600 万人超
個人向けウォーキングアプリ市場DAU 数百万規模の競合複数 (Strava、健康第一 等)

運動サプリ® は 個人向け (espl.jp)法人・自治体・健保向け (gh.espl.jp、運動サプリ GH) の両軸で展開しています。

C2. 収益モデルは何か?

主な収益源は以下です。

  1. 法人・自治体・健保向けライセンス収入 (運動サプリ GH 経由)
  2. チャレンジ作成・実行時のシステム利用料
  3. 特許ライセンス収入 (第三者が同等システムを実装する場合)

詳細な料金プランは 運動サプリ GH を参照してください。

C3. ガス代がかかるなら、ユーザー獲得のハードルが高いのでは?

サイトで明示している通り、ガス代は数円〜数十円 です。チャレンジを作成・実行する際にのみ発生し、日常の歩数記録は無料です。

ガス代のハードルを下げるため、以下の設計を採用しています。

  • 歩数データはオフチェーン管理 (コンテンツ DB)、ハッシュ値のみブロックチェーン送信 (特許第6696672号 請求項 3 の構成)
  • JPYC を活用した日本円建てのチャレンジが可能

C4. ブロックチェーンの取引手数料が将来高騰したら、ビジネスモデルが崩れるのでは?

本特許はブロックチェーン依存ではありません。第6696672号 請求項 12〜14 でサーバー実装パターンも権利化 しているため、ブロックチェーンの経済性が変化した場合、サーバー実装に切り替えても特許権の保護は維持されます。

現時点でブロックチェーン実装を採用しているのは、改ざん防止・運営非依存・トークン経済との接続という設計上のメリットによります。

C5. 健保組合や企業が応援金を拠出することは法的に問題ないか?

健保組合の保健事業として、加入者の健康増進にインセンティブを設定することは制度上認められています (高齢者の医療の確保に関する法律、データヘルス計画 等)。企業の健康経営施策における従業員向けインセンティブも同様です。

応援金の法的性質は「賭け金」ではなく「条件付き贈与」または「報奨金」 として整理されます。賭博罪との関係については、運営者が胴元として利益を得ない構造 (特許第6696672号 請求項 15〜17 の均等分配など) が、賭博性を否定する根拠となります。

具体的な制度設計は、導入時に弁護士・社労士と協議の上で確定します。

C6. 健保や自治体の意思決定は遅い。営業サイクルが長すぎるのでは?

健保・自治体・大企業の意思決定サイクルは確かに長い (6 ヶ月〜2 年) です。これは本領域の構造的特性であり、運動サプリ® 固有の課題ではありません。同領域の他社 (ベネフィット・ワン、リンクアンドコミュニケーション 等) も同様の営業サイクルで展開しています。

運動サプリ® は個人向け (espl.jp) の市場も並行して展開することで、法人営業サイクルへの依存を軽減しています。

C7. スケール時のオペレーション負荷は?

チャレンジの判定と配分はスマートコントラクトが自動執行するため、参加者数が増えても運営側のオペレーション負荷は線形に増加しません。これは特許設計のメリットであり、運営者を介在させないこと自体が、スケーラビリティの源 です。

データベース・サーバー側の運用負荷は、一般的な SaaS と同等の運用設計で対応可能です。

C8. 競合に買収されたら特許の価値は消えるのでは?

特許権は譲渡可能な財産権です。買収シナリオでは、特許権が買収企業に移転するか、ライセンスを受ける形になります。いずれにせよ 特許そのものが消滅するわけではない ため、価値は移転または評価され、株主に還元される構造です。

D / 技術実装・ブロックチェーン依存・JPYC

D. 技術実装・ブロックチェーン依存・JPYC

D1. なぜブロックチェーン (Ethereum) を選んだのか?

理由は 3 点です。

  1. 改ざん不可能性:応援金の配分ルールを運営側が書き換えられない設計を担保するため
  2. 運営非依存性:運営会社が破綻・買収されても、スマートコントラクトは自律的に動作を継続するため
  3. トークン経済との接続:応援トークン (サンクストークン)・長期応援トークン等の経済圏を構築するため (特許第6762647号)

これは設計上の選択であり、特許そのものはサーバー実装も含めて権利化しています (A4 参照)。

D2. JPYC に依存することのリスクは?

JPYC (日本円ステーブルコイン) は、運動サプリ® の必須要件ではなく、選択可能な決済手段の一つです。応援金の決済通貨は、Ether、JPYC、その他の ERC-20 トークンが利用可能です。

将来的に JPYC が利用不可になった場合でも、他のステーブルコインや決済手段に切り替えることで運用継続できます。

D3. ブロックチェーンのトランザクション速度・遅延はユーザー体験を損なわないか?

日常的な歩数記録はオフチェーンで処理され、ブロックチェーン送信は チャレンジ開始時・終了時・配分時の各タイミング に限定されます。リアルタイム性が必要な処理はオフチェーンに切り出す設計です。

歩数データのハッシュ値のみをブロックチェーン送信する設計 (特許第6696672号 請求項 3) により、トランザクション量を最小化しています。

D4. ガス代・トランザクションコストが日々変動する点はどう設計しているか?

以下の方針で対応しています。

  1. トランザクション数の最小化:ハッシュ値ベースの設計で送信量を圧縮
  2. L2 ネットワークの活用検討:Polygon 等のスケーリングソリューション
  3. サーバー実装オプション:請求項 12〜14 のサーバー実装パターンで、ガス代非依存の運用も可能

最適なコスト設計は、対象市場・利用規模に応じて選択されます。

D5. 秘密鍵管理のユーザー負担が大きいのでは?

これは Web3 全般の課題ですが、運動サプリ® は Web3Auth を採用 することで、ユーザーが秘密鍵を直接管理しない設計を実現しています。詳細は Web3 FAQ を参照してください。

なお、特許第6762647号 では 判定用データ送信端末の鍵秘匿部 (請求項関連明細書 段落 0119〜0123) により、秘密鍵の不正移転を防止する仕組みも権利範囲に含めています。

D6. スマートコントラクトのバグや脆弱性のリスクは?

スマートコントラクトのコードは検証可能であり、デプロイ前のセキュリティ監査により脆弱性を最小化しています。万一の脆弱性発見時には、特許第6762647号 で権利化されている 「自己解体モード」 (明細書 段落 0150〜0152) により、スマートコントラクトを安全に停止し資金を保全する設計です。

D7. ブロックチェーン規制の変更リスクは?

日本では、暗号資産交換業の登録制度 (資金決済法)、改正金融商品取引法によるステーブルコイン規制等が整備されています。運動サプリ® はこれらの規制枠組み内で運用されています。

将来的な規制変更に対しては、サーバー実装パターン (A4 参照) への切り替え柔軟性 を持つことで、規制対応力を確保しています。

D8. データプライバシー (GDPR、個人情報保護法) への対応は?

歩数データ・体重・血圧等の個人情報はオフチェーンの暗号化データベースに保管され、ブロックチェーンには ハッシュ値のみ 送信されます (特許第6696672号 請求項 3)。これにより、個人情報が公開台帳上に記録されることはありません。

国内法 (個人情報保護法)・EU GDPR への対応は、運営会社 (株式会社センス・イット・スマート) の プライバシーポリシー で明示しています。

E / 将来リスク

E. 将来リスク

E1. 特許の存続期間が切れたらどうなるか?

第6696672号 は出願日 2019 年 8 月 29 日 (国内移行) から 20 年、第6762647号 は 2020 年 1 月 21 日から 20 年が存続期間です。2039〜2040 年までは特許権が有効 です。

ただし、本領域は技術進化が速いため、存続期間中に新たな改良発明を継続的に出願することで、特許ファミリーを拡張する戦略を採っています。第7464334号 (2024 年登録) もその系譜です。

E2. AI エージェントが普及したら、本特許の価値は変わるか?

むしろ価値は高まります。AI エージェントが行動変容を自動化する世界では、「動機・行動・結果配分を自動執行する構造」 がインフラとなります。運動サプリ® はその構造を先に特許化しているため、AI 普及時の 下のレイヤー として機能します。

詳細は AI エージェントと行動変容 を参照してください。

E3. 競合大手 (Google、Apple、Microsoft) が参入したらどうなるか?

大手の参入に対しては、特許による法的障壁が機能します。Google Fit、Apple Health 等の既存サービスは記録系であり、本特許の構成要件を満たしていません。これらが動機設計領域に踏み込む場合、本特許のライセンス取得が前提 となります。

ライセンスシナリオでは、運動サプリ® がライセンサーとして収益を得る立場になります。

E4. 暗号資産規制が厳格化されたらどうなるか?

A4・D7 で述べた通り、本特許はブロックチェーン実装に依存しません。サーバー実装パターンへの切り替え柔軟性を持つため、暗号資産規制の影響は限定的です。

E5. 運動サプリ® 自体が事業継続できなくなった場合、特許権の扱いは?

特許権は会社の財産権であり、事業継続性とは独立して評価・譲渡が可能です。万一の事業継続困難時にも、特許権そのものは別個の資産として扱われます

F / 知財関係者・競合精査者向け

F. 知財関係者・競合精査者向け

F1. 包袋 (出願経過情報) はどこで確認できるか?

J-PlatPat (特許情報プラットフォーム) で、各特許番号で検索可能です。

  • 第6696672号:出願番号 特願 2019-569499
  • 第6762647号:出願番号 特願 2020-517617

F2. ファミリー特許の全体像を把握したい

以下が登録済特許ファミリーです。

番号 登録日
日本第6696672号2020 年 4 月 27 日
日本第6762647号2020 年 9 月 11 日
日本第7464334号2024 年 (登録済)
韓国第 10-2313308 号登録済
韓国第 10-2482357 号登録済
台湾第 I822932 号登録済
米国・欧州・中国(出願中)

優先日:2018 年 12 月 21 日 (第6696672号)、2019 年 8 月 9 日 (第6762647号)

F3. ライセンス取得は可能か?

特許権者は 株式会社センス・イット・スマート です。ライセンス取得に関する問い合わせは お問い合わせフォーム より受け付けています。

F4. 引用文献として挙げられている先行技術は何か?

第6696672号 の公報引用文献:

  • 特開 2003-196408 号公報
  • Qiita 記事「お金を賭けた目標設定でハラハラドキドキ達成させるサイトを作った【個人開発】」(2018 年)
  • Deloitte 社レポート「Blockchain in Health」

第6762647号 の公報引用文献:

  • 特開 2019-133630 号公報
  • 特開 2019-091402 号公報
  • 特許第 5806428 号公報

これらの先行技術は、本特許の構成要件すべてを備えていないため、本特許の登録を妨げませんでした。

F5. 無効審判のリスクをどう評価しているか?

登録から 5 年以上経過していますが、無効審判請求はなされていません。引用文献分析の結果、本特許の構成要件全体 (特に 3 者構造 + 応援金預け入れ + スマートコントラクト自動配分 + 失敗者 → 成功者分配 の組み合わせ) を備える先行技術は確認されていません。

無効審判のリスクは存在しますが、現時点で具体的な脅威は顕在化していません。

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